2026年02月14日
祭祀承継者弟に対して兄が両親の遺骨が埋葬された墓(墳墓)の所在地を教えて貰う権利等が認められるか争われた事例の紹介~令和3年4月9日札幌地方裁判所判決・判例第一法規ID28312573 ~
1 兄が祭祀承継者弟にした請求
① 墓参についての慣習上の権利に基づき、両親の遺骨が埋葬された墳墓の所在地に関する情報開示
② 当該墳墓への参詣の妨害禁止
③ ①と②の権利を侵害されたとして不法行為に基づく損害賠償請求
④ 民法897条2項に基づき、上記遺骨の分骨手続及び分骨後の遺骨の引渡し
(注意)(祭祀に関する権利の承継)
第897条
1 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って 祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
2 札幌地方裁判所の判断
(1) 「子孫として先祖の墳墓を参詣するという行為は、死者をまつり先祖をしのぶという素朴な宗教心に基づくものであって、これにより満たされる宗教上の信仰心や感情といったもの自体は、法律上保護される利益に当たらないとまではいい難い。」とした。
(2) しかしながら、「ここから直ちに、一般に「墓参をする権利」というものが人格権ないしそれに準ずる権利として認められ、原告が被告に対して「本件遺骨が埋葬された墳墓を参詣させることを請求する権利」を有していて、これに基づき、裁判上、妨害排除請求権ないし妨害予防請求権まで行使することができるというのは、あまりにも飛躍があるというべきである。特に、原告はこのような権利についての法令上の根拠を何ら具体的に主張せず、ただ「墓参をする権利」が慣習上認められるというにとどまっているのであって、この点からも原告の主張についてはその採用がためらわれるところである。」とし、被告が「静かに本件遺骨を守りつづけていきたいと願っている」点にも配慮し、前記①ないし③について否定した。
(3) ④については「分骨」という用語自体、その対象、内容等について法令上定義されたものはなく、ただ「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」(昭和23年厚生省令第24号)5条に証明書の発行についての規定があるだけであるし、一般用語としても、「分骨」とは「遺骨の一部を分けて、他に納めること。」(広辞苑第6版)などとされているにすぎない。等の理由から特定がされておらず不適法として却下した。
3 視点
祭祀承継者やそれ以外の遺族の感情の対立が深刻な場合、本件裁判例のように争いが生じることは増えてくると予想されることから、同様の事案が生じた場合参考となる。